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戦況が悪いので助っ人として向かうようにとお達しがあった。暗部として、名に恥じぬよう暗躍するという形でカカシは戦闘に貢献していた。 暗部仲間が木の上から戦場を見渡していた。まあ、言わずもがな、だろうなあ。だから俺たちが助っ人してるんだし。 「聞く話によれば、なんでも下忍まで駆り出されてるらしいぜ。」 その言葉に、面の下でほんの少し動揺した。だが仲間に気付かれる程ではない。 「木の葉も落ちたものだな。下忍風情に戦場で何ができる。」 自分の声とは思えないほど冷徹に言った。仲間は苦笑いして、確かにねぇ、と俺の言葉を肯定した。 後方にいた者たちは、伝令を聞いて撤退を始めているようだった。ま、普通の判断だったらそうするだろうなあ。どう考えたって今回は負けだ。次に活かすためにここは引くべきだ。引き時を見誤ると余計な死人を出す。木の葉の仲間を犬死にだけはさせたくない。 「おい、どうした?」 暗部のままの姿を現すと、2人は硬直した。 「怯えるな。お前たちは同じ木の葉の者だろう。何を慌てている。」 「お、同じ班の上忍師と仲間が、敵の上忍に襲われて、上忍師が怪我して、仲間は足止めするからって、」 少年が息を乱しながらも懸命に伝える。余程慌てているのか、ハキハキとした戦場の伝令の任務報告とは雲泥の差だったが、状況は理解した。伝令を聞いたならばすぐに撤退すれば良いものを、下忍を引き連れてどうにかなる戦場ではない。その上忍師、判断を見誤ったな。 「馬鹿が、」 俺は舌打ちした。2人がびくつく。まあ、暗部ってだけで普通はびくつくよなあ。 「お前たちは後方にいる救護班の元へと行け。この戦は撤退するだろう。」 俺は巻物を手に取ると指を噛んで血を滴らせた。そして巻物に血を載せると印を結ぶ。 「お前たち、この2人を援護して救護班までついていけ。ここはまだ安全だがいつ敵が襲ってくるとも限らない。」 忍犬たちはそれぞれ吼えて返事した。俺は2人に向き直った。 「お前たちも、死にものぐるいで走れ。いいな、行けっ。」 言うと2人は走り出した。忍犬たちが2人を守るように囲んで走っていく。あの2人、大分息が上がっていたようだが、ここで休めばまた危険がやってくるとも限らない。安全な域までひたすら走らなければ、命の保証はないのだ。辛くとも、走り抜けてほしい。 キーン、と金属の音が聞こえた。闘っている、どこだっ!? 「お前、下忍にしてはいい腕だな。ここで死ぬには惜しいよ。」 「うっさいなっ、お前に殺されてたまるかってのっ、バーカっ」 敵を煽ってどうするよ。勝機があれば煽ったっていいけどさ、どう見ても自分、不利だろ、下忍君。 「いたぶるのも飽きたし、死ぬかぁ?」 なんでもないように言って敵が動く。俺はその油断しきった敵忍の首めがけて、太刀を浴びせた。 「あの、」 後から声がした。けれど、振り返りたくはない。だってまだ、約束の時じゃ、ない。 「下忍、お前の仲間は保護した。今は救護班の元へと向かっている。お前の上忍師はどこだ?報告では怪我をしていると聞いていたが。」 振り返って感情のない声で言うと、声の主は顔を引き締めた。 「上忍師はここから南西方向で倒れています。生死は不明であります。」 「了解した。お前も付いて来い。ここはじきに敵の地となるだろう。」 「はっ、」 ハキハキとした受け答えにこちらも引き締まる思いだった。イルカ、がんばってるんだね。 俺たちは上忍師の元へとやってきたが、上忍師はすでに事切れていた。部下の下忍たちを守って殉職か。これで英雄の仲間入りというわけだ。くそっ、死ななくてもいい状況だったんだろうに、やるせなかった。だが、こうなってしまっては仕方ない。もうすぐここにも敵がやってくるだろう。死体は、ここで処理しなくてはならない。 「下忍、この上忍師に家族はいるのか?」 「いえ、聞いた限りではいないと思われます。」 「了解した。ではこれから死体の処理をする、離れていろ。」 淡々と言うと、イルカは言われたとおり、下がった。俺は火遁、豪火球の術で上忍師の身体を完全に燃やした。ここは戦場だ、里に連れて帰るわけにもいかない。だが放っておくわけにもいかない。忍びの死体には、その里の情報が詰まっているから。だから冷酷に思われようとも、処理しなくてはならない。 「先生を、木の葉の忍びとして辱められることなく昇天させていただき、ありがとうございます。」 振り返ると、イルカは優しく笑みを浮かべていた。 「イルっ、」 だが俺が言おうとした言葉は、最後まで言えなかった。イルカは、薬指を自分の唇に宛てがい、 「指切り、」 と言ったのだ。 「げんまん、」 |